エンジェルス・イン・アメリカ

自身もゲイである劇作家の、トニー・クシュナーの戯曲をドラマ化した作品。

舞台版は、数々の賞を受賞した有名なものです。
元が戯曲ですから、現実と幻想、幻覚などが交じり合う不思議な構成で、まさに舞台を観ているようでした。

同性愛だけでなく、政治や人種、宗教などが全て題材になっていますし、愛についても深く考えさせられました。

ユダヤ人でゲイのルイスは、ＡＩＤＳに感染した恋人プライアーの蝕まれ弱っていく姿に耐えられず、離れる決意をしますが、そうした後のルイスの苦悩が痛いほど辛い！
厳格なモルモン教徒のジョーは、神に愛され救われたいと願う余り、自身のマイノリティーを心の奥深くに押し殺し、偽って生きてきました。そうせざるを得ない現実が彼をがんじがらめにしていて、痛々しい。妻は、自分に性的興味を持たない夫に追い詰められ、薬漬けなんですが、ここにもセックスを必要としない愛を求める夫と、そうでない妻の溝があまりにも深くて、やはりこういう愛情は、普通ではないんだと落胆したりしました。

それぞれの苦悩や絶望などがきっかけで、彼らの人生はリンクしていきます。特に、ルイスとジョーの関係はこの後、深く結びついていくようです。

１枚に２話入っていて、約２時間ありますが、あっという間で、すぐに続きを見たくなりました。
色んな思いが、心に残ります。

出演者も、超豪華です！！

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昼過ぎからずっと、アメリカのミニドラマシリーズのDVDを流しっぱなしにして、カッター作業。
60分6話ものの、「Angels in America」。
すでに一回通して見ているけれど、もう一度。手元の作業に集中しながら、流れてくる台詞を台詞だけで聞き拾っていると、逆に鮮明に浮き上がってくるものがある。

80年代只中のニューヨーク。
エイズという天からまるで厄災のように降ってきた病魔に蝕まれはじめたアメリカに、天使はいるのか。

ゲイカップルの片割れがエイズの宣告を受ける。自分の愛する人間が間もなく苦しんで死ぬことを本人に伝えられた恋人が、自らの苦痛に耐えられず病に苦しむ恋人をひとりにして去ってしまう。彼は言う。「僕は自分自身を救いたいんだ」
権力と金にまみれた弁護士が、免疫不全によるカポジ肉腫を知らされて、医者にむかっていう。「エイズは同性愛者がかかる病気だろう、俺は違う。俺は男とやってるだけで、異性愛者だ。俺は肝臓ガンだ」そうしてカルテに肝臓ガンと書かせ、いっぽうでコネだけで手に入る新薬を山のように手に入れる。
敬虔なるモルモン教徒の夫は、同性愛者であることをひたかくしにし、その妻は薬に依存することで何を考えているのか分からない夫への不信感を誤魔化している。

不幸ばかりが押し寄せる人々の間を縫うように、泳ぐようにしなやかに人々を繋いでゆく、ベリーズというゲイの黒人青年。アメリカ社会の最上層に固執する汚れきった「ヘテロセクシャルの」弁護士が、彼から見れば最底辺で生きるゲイの黒人看護士に看取られて、死んでゆく。あとに残るのは役に立たなかった新薬の山。ベリーズはすべてをこっそりとかき集めて、同じ病気で死にかけている、白人の友人を救うために闇に紛れる。

こんな皮肉に溢れるストーリーは実はこの物語の片面でしかない。
なぜなら、この物語の本当の主役は天使であり、死に際にある人間の悪夢に登場する死者であり、あるいはドラッグ依存が見せる幻の世界であり、現実に動くストーリーとは一見なんの関係もない世界なのだ。その世界ではハレルヤとともに聖書のテキストが燃え、先祖の霊が歌い踊り、ベッドの陰に夫がナイフを抱えて潜む。

気付いたら全部見て、さらに最初から見直していた。
延々8時間近く、こたつに伏せてひたすらカッターを動かしながら耳は、ニューヨークの只中で叫ぶ人々の人生を追っている。
暗くなって、そろそろ恋人が帰るころだと知り晩御飯を作り始めて、カッターを握っていた右手が炎症を起こしてうまく包丁も握れなくなっていることに気付く。私の天使はこのあまり鍛えていない右手と、ときどき空っぽになる脳の中にも時に居を移しながら住んでいる。私次第で悪魔にもなることを、よく知っている。私の天使はおそらく炭酸飲料を横にチョコレートを齧りながらマンガを読んでいるだろう。天使は騙せないし、私にふさわしい存在でしかありえない。その限りなく心を許せる相手は、けれど最大のライバル。炎症を起こした右手は一晩眠れば回復するし、混乱した頭は睡眠で新しい夢が古い夢を押し流してゆく。悪夢のような現実にも、現実のような悪夢にも、眠くなるような昼間にも、眠りを受け付けない夜の奥にも、すべて私が生み出しているこの世界のあちらこちらに、私の天使がいる。

最終巻、
とうとう、プライヤー、ルイスとジョー、ロイとベリーズ（ノーマン）、そしてジョーの母とハーパー、それぞれ皆が繋がっていきます。

ルイスとジョーは上手くいくかに思えたのですが、お互い心の深くをさらけ出していませんでした。
初めて、ゲイとしての幸せを掴んだかに思えたジョーは、唯一の支えであった「神」にさえ背き、ルイスへの愛を示そうとします。
しかし、ルイスにはそれが苦痛でもある。裏切り、捨ててしまったプライヤーを忘れられない。
ジョーと過ごしながら、プライヤーに未練タラタラなルイスって、なんて、ずるいんだ！−と、思っていましたが、ジョーも全てを吹っ切った訳では、なかったんです。
お互いに、何もかも新しく始められる程、過去を清算できない。

ロイとベリーズは、ゲイのナースとエイズの患者という関係以上に不思議な‘絆’で繋がっていきます。
アル・パチーノの演技は、凄すぎて怖いくらい。

「運命」で出会う、ジョーの母とプライヤー。
ここにも、不思議な絆が…
プライヤーの預言者としての夢は、ジョー母の助言で終結します。もちろん、天使と対峙したのはプライヤーですが、誰か側にいて欲しいと願った時、そこにいてくれた彼女の存在は、それこそが「救い主」だったはずです。

最後にプライヤーは言います。
「もう、密かには、死なない。The Time is come.」

登場人物全てが、それぞれの気持ちをさらけ出し、自分自身で生きる意味を見つけ歩んでいく姿は素晴らしいです。

８０年代はアメリカだけでなく、世界で色んな事が起き、環境破壊がクローズアップされ、エイズは不治の病と恐れられていました。
しかし、今はそれら全てを地球規模で捉え、克服しようと努力しています。エイズは必ずしも‘死’の病気ではなくなりました。
人間は、生きている限り進歩し続けるのでしょう。

色んなメッセージの詰まった、素晴らしいドラマでした。

３話・４話が収録されています。

母親に「自分はゲイだ」と、告白したジョー。
上司のロイは、ＡＩＤＳに感染し、深刻な状態にもかかわらず、そうとは認めず、自分の保身の為、ジョーを利用しようとする。
尊敬し、慕っていたロイに裏切られる形になった時、ジョーが救いを求めたのがルイスでした。

最初、ルイスに対して、恐れや戸惑いをみせるジョー。
自分の行動に何か理由をつけなくてはいられない彼は、
「地獄に落ちるね」
「僕は、ひどい奴だ」と、自分を貶める。
そんな彼にルイスは、「匂い」について話します。その場面は、物凄くセクシーで、見てるほうもドキドキします。
一線を越えたジョーは、ルイスに「愛」を口にしますが、ルイスはまだプライヤーを忘れてはいない。
最初のジョーとは全く違う人間のような、本能的な振る舞いは、やっと自分自身をさらけ出せる相手に出会えたんだな、と感じさせます。

ルイスと離れたプライヤーは、徐々に病が進行していき、深層心理を夢にみます。
「天使」として表れ、彼に道を説くのですが、この表現方法が凄いんです。

ジョーとルイス、プライヤー、ロイと、プライヤーの友人の看護師との関係は増々、目が離せないものになってきました。

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２０世紀末。エイズ禍、世界経済の停滞、レーガノミクスで街にはホームレスがあふれ、共産主義イデオロギーは崩壊しつつあり・・・。
舞台発表当時は、あの時代の閉塞感と不安感を黙示録的に描きつつ、どれほど苦しく惨めな生でも生き続け、前に進むことを選択する人間の希望を表現した脚本には、それなりのメッセージ性があったのだろうとは思うのだが・・・。
つくり手がものすごく真面目なことが感じられるだけに・・・笑っちゃったよ、ゴメン（＾＾；

仰々しく現われた割に「ちょっと待って・・・なんか手違いがあったみたいなんだけどーー！？」と天を仰いで叫ぶ天使とか。
”白塗りご先祖さまズ”とか。
サンフランシスコに大地震が起きたくらいで（被災者の方には謝罪を）家出しちゃう神様とか。
どこで息継ぎしてんの？ってくらいしゃべってしゃべってしゃべりたおす俳優陣とか（舞台劇だから仕方ないけどさ。ある意味すごい見ものではある）。
アル・パチーノ演ずる悪徳弁護士（資格剥奪済）がエイズによる合併症で息を引きとるまぎわに「生まれ変わったらもう人間はいやだ。タコになりたい」って、なぜにタコ？
「足の筋肉断裂した」って、天使さん？
ホームセンターで売ってそうなハシゴのぼって天国行ってみたら、スーツにネクタイに羽根つけた天使がずらーっとデスク並べた巨大会計事務所みたいだったりとか。
アイタタタタタ・・・

いやいや、ちょっとは真面目にレビューしよう。
２１世紀を迎えた今、われわれはもう知ってしまっているのだよ。新たな千年紀に入っても（ま、そもそも人間が勝手に決めた暦だけども）、世界には疫病と災害と無知と貧困と飢餓と差別と戦争が溢れかえっていることを。
イデオロギー対立による東西冷戦は終わったけど、その代わり民族紛争で昨日までの隣人たちが殺し合い、テロリストは爆弾抱えてビルやらリゾート地のレストランやら非武装地帯やらに突っ込み、悪の枢軸とやらが核兵器開発にいそしんでいることを。
地震と津波で一瞬にして何千という人が命を落とし、ハリケーンに襲われた地域では金持ちはさっさと逃げ、行き場のない貧困層が渦巻く水にのまれたことを。
「神様帰ってきたら訴えてやれよ」とか言ってる場合ではない。