たまゆらの女

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アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「２１グラム」（２００３）ほどではないにしろ、時系列がバラバラとなった構成となっている。最初は混乱するが、鑑賞意欲を大いにそそられる。一体どういう話であるのか推理しながら観るのが楽しい。

私の解釈は次の通りである。短髪のコン・リーが詩人のチェンチン（レオン・カーファイ）からその著書にサインを貰う。その著書の世界を短髪のコン・リーが空想したのが、この作品ではないだろうか。

砕け散った磁器。水辺に舞い落ちる詩片。見つからない秘湖。詩的に挿入されるショットが悲劇を予感させる。繰り返し登場する列車は、チョウユウ（コン・リー）の熱い想いを象徴するものだろう。

見る前は都会の男に飽きられて捨てられる田舎の女性の話だと思っていました。（単純に）
でもコン・リーが演じていたヒロインはちゃんと自立した女性で、空しさを感じながら何とか自分の恋に向き合っていこうとした女性で、恋人の詩人は彼女の愛を支えきれないふがいなさに悩むナイーブな男、無骨ながら彼女を愛する（べったりした献身じゃなくて面倒見のいい男友達のようなところに優しさを感じました）獣医の男も、それぞれにお互いを思いやっていて、それがきれいな映像の中に出ていてとても美しい映画でした。
全然関係ないけど、ヒロインの水に漂う印象は複数の男に愛されたあげく悩んで入水自殺を遂げた日本の「真間の手児奈」伝説を思い出させました。
詩人の住んでいた重慶市は中国で一番大きな都市らしいです。同じく重慶が舞台の「ションヤンの店」という映画にも、同じように河を渡るケーブルカーが登場していて、それもこの映画と同じく物悲しい雰囲気を出していたのが印象的でした。こちらの映画もいいのでお勧めです。

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都会の洗練された詩人と、田舎の無骨で獣医と、絵付け師の美しい女性の三角関係を描いた物語。愛しても見返りのないつれない男と、自分だけを愛してくれる誠実な男の間で揺れる女心。恋愛はいつの世もままならないものですね。

列車で10時間かけて詩人に会いに行くヒロインの行動は一見突飛なように見えるが、恋愛をしている人ならその衝動的な想いに共感するのでは。列車の中で、もどかしく切なく詩人を想うヒロインの姿に、獣医が惚れてしまうのも無理はないです。恋する女性は何よりも美しいのですから。

ヒロインにコン・リー、退廃的な詩人にレオン・カーフェイというキャストは、アジア映画ファンにはたまらない組み合わせ。コン・リーは、チャン・イーモウ監督のミューズであった時代より大好きでしたが、年齢を重ねて憂いを帯びた美しさに磨きがかかったと思います。そのはかなげな様子は、まさに「たまゆら」という形容詞がピッタリです。（新しい監督のミューズのチャンツイイーより、奥深い美しさがあると思います。）

物語の結末には、少々はぐらかされたような気分になりましたが、コン・リーの美しさに免じて許すことにしました。

ストーリーはどうということのない単純な話で、それをわざわざ時間をひっくり返したりしてややこしくしてる。人物描写も心理描写も甘く、それも話を訳がわからなくしている。ただあらためてチャン・イーモウのと違って、現代風の服装をしているコン・リーを見て魅力的だなぁと思った。単に美形というよりもかもし出す魅力がある。これだけがこの映画を救っています。まぁ、監督もそれが一番見せたかったのかも。スローにして彼女を映す場面がたくさんあるしね（これはくさいのでやめて欲しい）。

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傍から見ると、破綻しているようなそんな恋愛、堕ちていくそういう恋愛、ありますが、映画として成立するのは面白いと、大して楽しまずに観てきました。でも、コン・リーから感じる熱さがたまりませんでした。彼女の器用じゃないとこ、そういうのが、「納得できちゃう」感じがしました。初めて、共感できた、といえます。

もう一度観たくなるのではないでしょうか。