この森で、天使はバスを降りた

（1996年制作・アメリカ）
「この森で、天使はバスを降りた」情緒たっぷりの邦題だが、原題は
ハナが経営するレストラン『スピットファイアー・グリル』という店の名前。
だが、どことなく悲劇の香りのするタイトルは邦題として悪くない。
殺人の刑期を終えて、メイン州の小さな町ギリアドでバスを降りたパーシー
（アリソン・エリオット）。保安官の世話でハナの店で働くようになるが、
客たちは閉鎖的でいながら、よそ者への好奇心だけはいっぱい。
イライラしながら『刑務所を出たばかりよ、気が済んだ？』と叫ぶパーシー。

パーシーと共に働くうちに、理解して仲良くなるのが店主ハナと、店を手伝う
シェルビー。そして、美しいパーシーに惹かれて交際するジョーだ。

だが、どうしても「刑務所出身だから何かやらかす。信用できない。」と思ってるのが
シェルビーの夫であり、ハナの甥でもあるネイハム（ウィル・パットン）だ。

何も悪い事をしていなくても人の悪意で不幸になる事がある。
そもそも殺人の罪を犯したのも、義父の虐待によるもの。刑期はまっとうしても
自分の子供を失ったという罪は、終わる事なくパーシーを責める。
そんなパーシーが、ハナの息子であるイーサンを助けようと、命がけで滝の流れに
飛び込んだ・・・。

ペグマタイトという花崗岩がとれるギリアドの広大な森が美しい。
（ベトナム戦争で心を病んだイーサンが10年も隠れ住んだ森）
季節が変わり、森の緑が鮮やかになってきた頃、赤ん坊を抱いた若い娘が町でバスを降りた。
温かく迎える町の人々。
何かが変わった風景だった。パーシーが成し得た事の大きさに感涙せずにいられない。

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暗い悲しい過去を背負った主人公が一生懸命、健気に生きる姿を通して周りの人々が変わっていく。
彼女に感化されていく様子は、こちらまで暖かい気持ちになれました。
最後は残念だけど街の人々の心と同じように、私の中にも一つの明かりがともりました。
あたたかい作品です。

ジャケットを見て、「エイミー」のような少女の物語かと思っていたのですが、全く違いました。いきなり主人公が大人だったので、最初は戸惑いました。

ある暗い過去を持つパーシーが、人生をやり直そうと降り立った街。そこで、彼女を預かることになったレストラン経営者の老婆。その老婆もまた過去を持つ。閉鎖的な街の住民にとって、パーシーは「よそ者」。すこしずつ、すこしずつ隠された事実が明らかになっていきます。静かに動いていくストーリーと、街の人々に起こる変化。パーシーからしたら、これはハッピーエンドではないし、人間の心の狭さが最後まで描かれていて苦しくなる部分もあったけど見終わった後に、不思議な余韻が残ります。
しかし、邦題からは全く違う話を想像していたので、原題のまま見たほうがよいと思いました。

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良い作品だと思います。だけど、悲しい気持ちになります。もう１回観たいか、と聴かれれば、最高に悲しい場面を乗り切れるか自信がありません。以下、完璧ネタバレのレビューです。

冒頭〜レストランで働くまで：「天使」は塀の中。清楚な女性を予想してたらいきなりこのシーンでびっくり（注：塀の中にいる人は清楚でない、という意味ではありません。あくまでイメージの問題ね）。無事出所して、この町で降り立った彼女は、レストランで働くことになるのだが、勤務中に煙草は吸うし、客の奇異の眼差しにぶち切れて、自分がムショ帰りである事を大声で暴露するしで、とても「天使」のイメージではなかったよ。

その後の様々な出来事：ハラハラする事も、退屈する事もなく、静かに時間が流れていく。小さな田舎町なんだけど、自然も綺麗で、良い感じの町。謎の男の出現とか、作文コンクールとか、後のストーリー展開を期待させるシーンも良かったよ。

誤解から：まあ、とんでもない事に。その誤解もパーシーには何の責任もなし。作品の中で唯一ハラハラさせられた場面でした。

教会のシーン（いわゆるお葬式のシーン）：とても悲しくて、信じられない気持ちでした。この作品観たこと、最高に後悔しました。彼女が本当に気の毒で仕方がなかった。

ラストシーン：何となく救われました。町の人は「よそ者」でも温かく迎え入れることが出来るようになったようです。

多くのレビューアーと同様に、私もこの邦題はとても違和感あります。原題「THE SPITFIRE GRILL」が良いタイトルだな、と思います。

今回２度目の鑑賞。
最初に見たのは随分前なので、相変わらずストーリーを良く覚えていなかった私には、見ているうちにだんだんといろいろ蘇ってはきたけど、新鮮に鑑賞できた。
ステキな風景に綺麗な音楽、そして何よりパーシーが過去の罪を背負いながらも純真に一生懸命立ち直ろうとしている様がいい。
そして最初は色眼鏡で見ていた人たちも次第に打ち解けて、ハナとシェビルは彼女の持つ不思議な魅力に取り込まれていく。
特に大きなクライマックスと言えるほどのことはないのだけど、なんだろう、心がしみじみホンワカしてくるよぅ。。
ラストは悲劇が起こるけど、それが新たな光となって皆の心に注いでくる。新たな希望と共に。
見て良かったと思える良い映画です。★４つ。

ところで、ハナの甥のお嫁さん（シェビル）役の女優、どこかで見たことある。。ウーンこの声、話し方。。誰だ？誰だっけ？？？
お！そうだ！「ミスト」の狂信的なババア役やった人だ！
ああ、この映画に出ていたんだ。
それも重要な役どころで。最初は夫のいいなりで自分の考えなど口にも出来ないおとなしい女性（夫からも村人からも脳みそ足りないと思われてた）が、パーシーと一緒に過ごすうちに、強く逞しくかっこよく変身していく女性を演じている。（確かこの役で彼女は何かの賞をとったはずだけど。。。）
彼女の演技がさらにエッセンスとなっていて良かった。