雲の中で散歩

　列車でのハプニングが無かったら決して二度と出会うことはなかっただろう、しかもそれぞれに訳ありの若い男女の偶然で必然の出会いによる恋を描いています。ロマンティックなドラマ好きの私には、とても大切な作品で、キアヌ・リーブスを初めて知った作品でもあります。繊細で憂いを含んだ翳のある役柄がこの頃の彼にはぴったりで、ヴィクトリアでなくても恋をしてしまいそうです。もっとも、その後の主演作を見ると、キアヌ自身は、こんな役よりも、かなり癖のある個性的な役柄の方が好みのようですが…。そういう意味でもとても貴重な作品です。

　ポール・サットンは第二次世界大戦が終わってやっと帰還したというのに、妻は戦地から彼がせっせと送った手紙を読むどころか、不倫して彼を裏切ったうえに、さっさと働けと言わんばかりの冷たい仕打ち。チョコレートのセールスの仕事に復帰してサクラメント行きの列車で出会ったのが、帰省途中の大学院生ヴィクトリア。彼女とのあれやこれやで列車の切符を無くし、仕方なくバスに乗り換えると、やはりヴィクトリアが乗っている。優しい彼は、他の乗客に絡まれて困っている彼女を助けたのはいいのだが、騒動を起こしたとしてバスから降ろされてしまう。

　泣いているヴィクトリアに事情を聞くと、彼女は妊娠しており、しかもその相手に捨てられたのだと話す。深く傷ついていて、しかもこのままでは厳格な父親のいる実家にはとても帰れないと嘆くヴィクトリアに同情したポールは、1日だけの約束で、彼女の婚約者ふりをすることを引き受ける。彼女の家に行ってみると、アラゴン家はメキシコ出身の由緒ある家柄で、広大なブドウ園を所有し、家族でワイナリーを経営している裕福な大家族。夕食の席でヴィクトリアの父親から、孤児院育ちの人間にこの家の花婿の資格はないと冷たく言い渡される。

　婚約者のふりをしているだけなのでむしろ好都合なのだが、孤児で家族のいないポールには、厳しくも愛情豊かで温かな大家族はとても魅力的で居心地がよく、そのままずるずると滞在を引き延ばしてしまう。ヴィクトリアとポールは、互いに次第に惹かれ合うようになるのだけれど、ヴィクトリアは他人の子を妊娠しており、不仲とはいえ、ポールには妻がいる。しかも、家長であるヴィクトリアの父親は極めて厳格。どう考えてもふたりの恋は前途多難。ラス・ヌベス（雲）という素敵な名の、広大で美しい牧歌的なブドウ園と伝統的で素朴なワイン造りの作業を背景に、互いを思いやる波乱含みのふたりの恋の行方がとてもロマンティックに描かれている。

　余談ですが、この映画は1995年制作で、1997年に放映された日本の恋愛ドラマ「バージンロード」（和久井映見と反町隆史が主演、大ヒットになった主題歌を安室奈美恵が歌っています）のヒントになっているのでは、と思っています。アメリカからの帰りの飛行機で主人公のふたりは偶然出会い、ふたりが知り合うきっかけとなるハプニングも映画とそっくり。そして、和美は恋人に捨てられたうえ妊娠しており、このままでは厳しい父親のいる実家には帰れないと、１日だけ婚約者のふりをして欲しいと、出会ったばかりの薫に頼むという設定。また、薫は施設で育っていて家族がいないという点も同じで、その後のふたりの恋の紆余曲折が描かれています。　

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

久しぶりに選んだ作品は、やっぱりキアヌでした(^O^)／

第2次世界大戦が終わり愛する？妻の元へ勇んで帰還した主人公ポール（キアヌ）
そこに待ち受けていたのは奔放な妻の裏切りだった・・・
傷心のポールは妻と自分の将来を考えて辞めようとしていたチョコレートのセールスの旅に出る。
その道中出会った女子大生。出会いは散々だったが彼女の美しさに惹かれいくポール。
傷心のポールの心をとらえて離さない彼女の実家、葡萄園とそこに暮らす人々。

妻との将来を思い描いてやっとの思いで妻と再会を果たすくだり・・・
戦場から毎日出した手紙の量がその離れていた月日をあらわしていました。
でも・・・正直どうでしょう。もらう方はうんざりだったりして( 一一)
殆ど読んでいない妻とポールの気持ちの温度差をはっきりと表し、「あぁ〜そうか別れるんだ」とこちらは納得。

とにかく彼はいい人なんです。きっと怒るなんて感情はポールにはないんだろうと思います。
妻と結婚したいきさつなんて出てこないけど、ポールが孤児として育ち、家族に対して渇望していたためとにかく選んだ相手なんでしょう。
そんな相手でも彼は全身全霊で妻を愛し、信じています。

そんな中で出会った娘。
純粋で無垢で世間知らずなお嬢様。
人助けだと思ってかかわった事がポールの人生を変えてゆきます。

葡萄畑のシーン。
セピア色を思わせるような素敵な場面が続きます。
収穫でにぎ会う祭り。
その中で葡萄を踏むシーンがありました。
本来なら感動する場面なんでしょうが、いかんせんおばさんですから(+_+)

「やだぁ、きたないじゃん。その泥足で踏むかぁ？おいおい」などと突っ込んでしまいましたよ。
昔はこうだったんでしょうね。

いつもきりりとしたキアヌ。
たまにはいいですね。こんな純朴で心優しいキアヌも。
勿論若い時ですから美しさもぴか一です。

誰一人悪人がいません。もちろん不貞を働いた妻さえも「よくやった！」と思えるような展開。

心温まるちょっとスローテンポなピュアなラブストーリー。
心乾くあなたにお勧めです。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

キアヌ・リーブスもこんな文芸的作品に出ているのかと
思いました。
雰囲気文芸ですが、
内容はわかりやすいし、とにかく映像がきれい、セリフもいいと思います。
それに、プラトニックも悪くないと思えます。

映画に詳しい友人に、「恋愛物でハッピーエンドでしかも泣ける映画を紹介してくれ」と訊ねまして出てきた答えがこの映画でした。観賞しましたところ、確かに、恋愛物でハッピーエンドで
しかも泣ける映画ではありました。その点では大正解だと思います。しかし、鑑賞中に「おいおい、それは無いだろ」と”苦笑”する事が数回有りました。簡単に言えば「有り得ない展開」とでもいいましょうか。ただ、恋愛、ハッピーエンド、しかも泣けるがキーワードのお方には、ある意味。期待を裏切らない作品では有ると思います。

戦争の最前線で戦い傷ついた男が
現実にも傷つき　半分「自分探し」の旅に出た。
行きがかり偶然知り合った女性の偽装亭主として
古きよき伝統を重んじる葡萄農園へと赴くのだが・・・
　
葡萄を育てるってどんなことなのか　どんなに愛情が必要か
醸すってどういうとなのか　とても興味深く見ました。
ファミリーという考え方もいい。
確かに別世界です。こんな農園に迷い込んだら　
私でも出ては来ないでしょう。
ロマンスの行方も　ファミリーの行方も優しくみせてくれます。

赤ワインが飲みたい。
(違っているか？でも私的にはこうなのだ)

でもキアヌってそんなにヤンキーって感じじゃないけど？