２００１年宇宙の旅

猿人を人類に変える道具を啓示した黒板は、宇宙船が飛行し、人類が移住を始めた月面にから発掘された。それは「モノリス」と名付けられた。太陽光を数百万年ぶりに浴びた黒板は、今度は、木星の方向に向かって信号を送る。「Ｈ・R・フロイド博士」（ウィリアム・シルベスター）は、ソ連の科学者からの質問に答えなかった。
宇宙船「ディスカバリー」は、木星へ向かう。「ボーマン船長」（キア・デュリア）と隊員の「フランク・プール」（ケイリー・ロックウッド）隊員が操縦し、人工知能「HAL（ハル）9000型」コンピュータだった。タイムワープを行ったあと、異常が起こる。「ＨＡＬ」は木星に行くべきではない、という越権発言を行う。「ボーマン」と「プール」は、「ＨＡＬ」を調整しようとするが、人工冬眠中の3人の科学者は生命維持装置を切られて死亡。「プール」も船外で死ぬ。
一対一になった「ボーマン」と「ＨＡＬ」は奇妙な駆け引きを繰り返す。「ボーマン」は「ＨＡＬ」を完全破壊すると、宇宙船は目的地へも行けず、地球へ帰還もできない。
「なぜ、木星に向かってはいけないのか」と「ボーマン」は対話を試みるが、「HAＬ」は歌をうたって、停止し、「フロイド博士」が、「モノリス」回収についての命令を語る。
ここからが、よく分からない場面ですし、魅力的な場面でもあります。
時間を越えています「ボーマン」が認識する部屋の色彩は、緑、白、オレンジ……など変転し、彼は、意識している年齢から急速に老化します。「ヒト」の一生とは、かくも夢うつつのものなのか……。またしても、黒い板が登場します。
色彩が異様です。「ソラリゼーション」という、白黒フィルムの現像段階での失敗を、逆手にとって、ネガ・ポジを反転させる効果です。中川信夫監督が得意にしていたと記憶しています。カラーで「ソラリ」があるかどうかは確認していません。色彩が普通でなく、反転しているような印象を受けました。青は赤に、黄色は緑に。仏教の輪廻を感じましたが、この映画は、「分かる」ということが、いかに虚しいことか、を教えてくれているのことは、確かではないでしょうか。

幾度も観てきた本作をブルーレイで再見。さすがにクリアーで美しい映像と音声。混沌を表す不協和音から始まり、「ツアラトストラ」が高らかに鳴り響く月と地球と太陽が重なるオープニングから圧倒される。しかし、見えすぎちゃって困るわ〜な個所もあり、それは合成や着ぐるみが鮮明に写され過ぎて、さすがに本物との質感のちがいが明らかになってしまうところ、など。これを分かり易く言えばモザイクが消えるとエロを感じない・・とは少しちがい（笑）、アナログからデジタルに、レコードがCDに取って代わった今、失われたノイズや濁った音を味わいと感じるようなことなのだろう。ブルーレイの鮮明さは全ての要素をプラスに働かせるわけではないように思った。本作の内容もまた同じで、全てがよく見えればよいというものではない。
本作の味わいは「間」にある。本作の全ての謎、類人猿と石盤、人とコンピューター、人と石盤といった関係は明らかにされることはない。キューブリックは本作へ、解説的なシーンやセリフを入れず、世界観だけを原作者クラークやNASAのバックアップによる圧倒的なリアリティで隅々に至るまで構築する。物語に製作者の意志がないため、鑑賞者は物語の真意を探そうとして想像の羽をはばたかせることになる。素材は交響楽に彩られたう驚異的な映像のみ。そこから鑑賞者は、類人猿は石盤により進化したのか、石盤の創造者は、コンピューターは意志を持つのか、人は更に進化するのか、といった疑問を自ら見つけ、更には答えも自分で出さねばならない。こういった理由により本作は、難解から単純まで様々に捉えられ、それぞれの思考過程から生涯忘れられない体験を与えてくれるのだろう。
個人的にいつも思うのはキューブリックの冷徹さで、その意思の強さによる抑制が役者の演技を制限するのか、演技に熱っぽさを感じないということ。それは人類の進化の虚ろさや宇宙空間の絶対の虚無といった、物語が持つ空気感に働きかけているようにも感じる。しかし本作ではシブい演技をする役者がおり、それは「もう一人の乗員」赤い隻眼のハルだと思う。人ではない“彼”に一番の人らしさを感じるのは、私がひねくれてるのだろうか。しかしキューブリックの熱の入れようは、役者陣ではハルが一番だと感じてしまう。ボウマンとの別れ際のハルのセリフには、キューブリックの思い入れがみっちりと詰まっている、といつも感じてしまうのだった。
そもそも映画というものは「間」を持つもので、面白い映画には絶妙な「間」が必ず用意されている。
本作の「間」はSFという題材にマッチして、更に想像を掻き立てる力がある。この「間」が、永遠に解けない謎にまた挑もうとさせてくれる。★４＋

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類人猿が触った板はなんなのでしょう。あれを触ると賢くなって、というか、なんというか骨を武器として使う事を思いつくのですね。それを放り投げると、2001年の武器の宇宙船になるんですね。

音楽とシンクロした部分を除いては、余計な音楽がないのが宇宙空間の静寂を感じてしまう、アナログ感性の私には、凄いコンピューター「ハル」は神のごとき存在に思ってしまいます。

何か今あるものに例えなければ理解出来ないからです。

「ハル」は、彼らの「神」みたいだなぁ、と確信はないけれど思いました。宇宙船という空間を牛耳る神。

今もロボットに「感情を加えよう」としている研究者がいて、その一歩手前まで進んでいるみたい。行き着く先は「ハル」を目指しているのかなぁ。大したものだと、みながら別のことを考えていました。

目だけのロボットというのも怖い。よく、故障するし、それを分かっているロボット、というかコンピューターってのも不思議なもので生き物みたいで気持ち悪いですよね。

映像は40年前なのにリアルです。抽象的で美しい。最初に観た時はびっくりしましたが、こうして、普通に家のテレビで観る時代になってこれを観ている私って凄く未来的で知的みたい、と思うけれど、正直な話、『わかりません』。

誰が横にいて解説しながら観たい映画です。
頭悪くて申し訳ないです。

いうまでもない名作。あちこちで詳細なレビューを見ることもできます。いろいろ議論が繰り広げられていますが、とりあえず、
人間の存在についての問いかけを、美しく、リアルな映像で描き出したという点が名作の所以だと思います。

ただし、監督ご本人もおっしゃるように、娯楽作品としてではなく、芸術作品として撮られた映画なので、気楽に見るというわけにはいきません。疲れているとき、眠いときは避けましょう。

でも、大きな画面で、何も考えず映像を流しておくという楽しみ方もあるかもしれません。宇宙にいる感覚を味わえます。
アニメや娯楽映画で宇宙というと、すばやいアクション、大音響を思い浮かべますが、実際にはむしろこの映画のようなゆっくりとした静かな世界でしょうね。

レビューの中にあった「2001年ぽかーんの旅」というのが気になって、そうなっても構わないや、と思って借りてみました。なるほどー、と思いましたが私は好きなタイプです。いちいちかっこいいのです。造形物は色や形がすべて美しく、宇宙空間は、この時代にどうやって撮ったのかと思えるほどです。はっきりしたストーリーを感じられないので、難しいという感想もあるかと思いますが、個人的には、どのように受け取っても構わないのだ、と思ってます。

ゆったりとした週末に、イームズのラウンジチェアなんかに身をゆだねて鑑賞できれば幸せかも知れんなと、夢見てしまいました。脳味噌をぱっかーんと自由にして、いろいろ思いめぐらすのによい作品だと思います。余裕をもって是非どうぞ。