ＪＵＮＯ／ジュノ

高校生が妊娠するという重そうな話ながら、これが軽快な明るいコメディの佳作。昨今は日本でもこういうケースは多いようです。
生まれてきた子供たちが、幸せな環境で育てられれば、結果よしでいいと思います。この映画は、登場人物が全員いい人。
ジュノも相手のボーイ・フレンドもいい奴で、好奇心からそうなったものの咎める気にはなれません。
ジュノの両親（母親は継母）もいい人たち。里親候補の夫婦もいい人たち？だと思っていたのですが．．．、ネタバレになるので書けません。
で、後半いろいろありますが、結果オーライかな。
ジュノの親友や産科でプラカードを掲げる友人とか出てくるほぼ全員が真面目に人生を歩んでいる人たちで、気持ちよかったです。
アメリカ社会も捨てたもんじゃないと希望の持てる佳作。
ジュノという名前はゼウスの妻の名前からとったらしく、その妹のちびちゃんの名前もリバティ＝ベルと、ジュノのお父さん（いいオヤジ）の名づけのセンスのよさにも拍手。

立ち上がって行動したくなる映画。

タイトルバック。
ジュノ（エレン・ペイジ）が「椅子」の前からスッと立ち上がると、ポップでキュートなアニメーションの街中を散歩しはじめる…。
（おしゃれ〜、かわいい〜）

重要なシーンで「椅子」が登場。
ジュノのココロの中の象徴が「椅子」。「椅子」にも注目して観てください。

私は、試写会と劇場でお金払って観ました。
公開前にアカデミー賞主要4部門にノミネートで、脚本賞受賞。

予想通り、試写も劇場も超満員。しかも、98%（多分）が女性。
オジサンひとりで観るのは勇気が必要なので、私と同年代、オバサンを誘って観ました。観終えた後、お茶しながらの感想。

「街角で無料で配られるタウン誌に「里親募集欄」があったでしょう。日本じゃ考えられない。そして女の子二人で親定め…。最初は、ジュノの生意気なセリフと、生まれてくる命をモノを扱うような態度に、コラッ！て感じ」
…
「ジュノが大切な事に気づくでしょう。壁に貼られた紙を見たとき、私、泣いちゃった」
…
「平凡なラストだけど、あの二人、素敵だった。継母さんも素敵だったし、お父さんも。いろいろな人に思いやりを持つべきよね。優しくなれる感じ。私も、腰掛けてお茶してる場合じゃない、スーパー寄って、愛情込めて晩御飯の仕度しなきゃ。」

で、私は、脚本かな。
メイキングや出演者のインタビューも結構観ましたが、みんなが口を揃えて言っていたのが、「脚本が素晴らしい！」ってこと。
脚本のディアブロ・コディはこれが初脚本。彼女が日々更新していたブログの大ファンだった、本作プロデューサーのメイソン・ノヴィックが、「試しに映画の脚本を書いてみて」の一言で、テレフォンセックス・オペレーターと保険コーディネーターの仕事の合間を縫って、2〜3週間で書き上げた脚本が本作。

この作品も、映画の「神」が舞い降りた脚本かもしれない…。


長いP.S.

野田聖子議員が講演会で「日本の里親制度の遅れ」を語るときに題材としていた映画で、ある意味、社会派映画です。
この映画の後（2008年6月頃）、アメリカのマサチューセッツ州グロスリー高校で、協定を結んで16歳以下の女子高生が集団妊娠したニュースが報じられていました。彼女たちの、その後は不明なのですが、少なからずＪＵＮＯの影響を受けてなのではないかと…。

この映画でも地元女子高校生がデザインしたリーフレットも配られていました。
（映画に出てきたかわいい小物たちを自分目線で語る素晴らしいリーフレット）

で、大人の私たちは、この映画の感動の理由後を深く考えて、おしゃれでかわいいラヴストーリーだけでとらえてはいけない映画だと語るできですね。

年頃の子供を持つ親は、この映画を一緒に観て、普段なかなか話せない話題を、しっかりと語り合うのも良いかも。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

ジュノ、という女の子。
別に悪い子でもなんでもなく、ちょっと風変わりだけど普通の女の子。
でも、やっぱ変わってるかな？
すごくいい子なんだよね、気持ちがPUREというか。

ジュノと親友リア、この二人のセリフが最高に面白い。
今の若者の言葉を駆使しているうえ、ジュノは頭がいいので、ユーモアのセンスもある。
あふれるセリフが本当に生き生きしているのです。
リアはチアリーダーなので、そんなルックスなんだけど、友達思いの本当にいい子。
こんな友達がいるからジュノも子供を産む、という選択肢があったんだと思う。

そして一番素晴らしいのが両親。
ママは継母なんだけど、最高に素敵。 Allison Janney がかっこよく演じています。
パパもいいのよ。 J.K. Simmons。
まず妊娠を告白、そして、「産んで、里親に渡す」と決めたジュノに「じゃあ、ビタミンいっぱいとらなきゃ」という継母。
娘の決めたことを全面的にバックアップ。

これはある程度、アメリカの文化というか、宗教というか、そういうことにかかわってくると思うんだけど。
まず、中絶は、ほとんど考えられない世界。
これは宗教的に問題がある場合が多い。ただ、この場合Junoは高校生なので、全く選択肢にないこともない。
でも、結構、最終手段かなあ。
通常産むもんね。
いい加減といわれるかもしれないけど、やっぱり授かった命は産みたいもの。
まわりが完全にバックアップしてくれたりすれば、やはり産むよね。日本ではまだまだそうは行かないんだろうなあ。
私の周りはシングルマザーがいっぱいいるので違和感ないけど、私の家族は無理だな。
しかも私に十分な経済力がないため、アウトだ。

ジュノは自分で里親もみつける。子供を授からないリッチなカップル、ヴァネッサとマーク。
この二人、 Jennifer Garnerが妻なんだけど、神経質でぴりぴりしている。
でも、子供がとっても欲しいんだよね。
このあたりをとても上手く演じています。とっても気持ちが伝わってくる。
妻となかなか対照的で、大人なのに子供のような心をもつマーク。
Jason Bateman 、こんな役をさせたらピカイチだよね〜。
この人。。。最初は少年のような大人だと思っていたが、結局　すごいimmatureな人間。
何を考えているんだか。。。この手のアメリカ男性、すごく多い気がします。
カンベンしてくれ。

で、肝心のBabyの本当のパパ。

ポーリーをMichael Ceraがお見事の演技。
彼の演技とセリフが私のツボにはまり、映画館で大爆笑。
誰も笑っていないのに。。。
表情と、セリフが絶妙です。
しかし、ポーリー、いい奴です。
子供だからいろいろしょうがない部分もあるけどね。
ジュノは男性を見る目は確かなんだな、と感心。

それにしても、 Ellen Page、素晴らしい演技です。
彼女の話し方には特徴があるんだけど、大変チャーミング。
将来が楽しみな女優さんであります。

ラストは、こんな選択もあるよ、という感じ。
結局、pro-choiceとpro-lifeという永遠のテーマがあるんだけど、JUNOの場合はpro-lifeであって、その上に別の決断をした。
やっぱりいつでも自分で選択できる環境があればいいけど、その環境を自分でいかにつくるか、ということが大事だと思いました。

考えることはいろいろあるけど、この映画は良いです。
おススメします。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

たった一度の興味本位でしたセックスで妊娠っしてしまった16歳の高校生ジュノ。
中絶しようとするも踏みとどまり、出産することを決意し両親に告白。
里親を見つけ、理想的な夫婦に自分の子供を託すことにする。
日増しに大きくなるお腹と、10代で出産することへの世間の反応、
ジュノの心からの本音が飾らずに描かれていることが、とても共感度高いと思います。

ジュノのキャラクターがとってもキュートで、物語が全然暗くない！
笑ってしまう発言も多くて、特にエコーの赤ちゃんをシーモンキーって表現しちゃうところとか、
里親に「搾り出して配達します」ってのには、仰天の笑い！
エレン・ペイジの話し方とかリアクションが、ツボを押さえてる演技でいいんですよね〜
そんなこんなで、出産までの道のりが明るく描かれています。

娘の突然の出産宣言に、両親が快諾とまではいかなくても、出産の大変さを諭しながらも
里子に出すという娘の考えに賛成してあげる反応は、日本ぢゃなかなか巡りあえない光景だと思いました。
それは、きっと子供を産んだとしても選択肢が少なすぎるからなんでしょうね。
欧米では養子縁組の制度もしっかりしているし、匿名で里子に出すことのできる国もあるくらい。
孤児院だったり、特定の施設に入れるか、または自分で育てるしかない日本の受け口の少なさが
問題だと思いました。受け口がないから、安易に中絶を選んでしまう。悲しいことです。

里親にと思っていた理想的なカップルの破局、お腹の子供の父親との関係、
ジュノがどのような決断をするのか、ここがこの映画の核になるところだと思うのですが、
ジュノが下した決断は、子供の幸せを一番に考えた結果だったから、良かったと思います。
最初は、子供の養育を放棄したように感じて違和感があったのですが、
高校生の二人が引き取っても幸せとは限らないし、赤ちゃんを望んで愛してる人がいるのなら、
そこで育ててもらった方が幸せ。愛情があれば、血のつながりは越えられますよねぇきっと。
ラストはとっても温かくて、素敵な光景になってたので、嬉しかったです。

＋が÷に見えるからやり直し・・・から始まる
唐突な妊娠発覚。
１０代らしく、簡単に中絶、そして心変わりに
養子と、予想される展開を裏切らない代わりに、
翻意して養子に出すことも止めるということは
見事に裏切ってくれた。
小気味良く自分を表現し、でも人の優しさも
きちんと理解して受け止めるジュノには力を感じる！
そして、ジュノのお父さんの最後の優しい言葉、素敵。