ある公爵夫人の生涯

残念ですが傷のためか最後まで視聴できませんでした。

１８世紀、十代の貴族の令嬢が、世継ぎを望む大貴族の公爵に嫁ぎ、
美貌と賢さで社交界の花になりながらも愛のない結婚生活に悩み、
若い愛人を持ち…って、ありがちなメロドラマです。

貴族の奥様って、初心な１6歳くらいで結婚して子供作って、２５歳くらいから
若い愛人と恋愛するってパターンが多いですよね。
「主人はワタクシに関心がないのですわ！」みたいな。
本作もそんな感じのお話です。

特に感動するような内容ではなかったけど、衣装が素晴らしかったです。
あと、ヒロインたちが下世話で下品な話を召使たちの面前で話しているのが
「あぁ、貴族だなあ」と思いました。
召使は空気とか家具と同じなんだろうなあ。すげー。

公爵役とヒロインの母親役が重みがあって良かったです。
ヒロイン役はキレイだけど、感情を露わにさせ過ぎで貴族っぽさを
感じませんでした。
メシが足りていないのでは…

社交界で光るファッショナブルでスタイリッシュなダッチェス。ダイアナ妃の物語を時代を変えて創作したストーリーと思ったら、なんと実話。しかも彼女、スペンサー家のご出身とは。ウィリアムは、なんというか、どうしようもないですね。人の気持ちとかどうでも良くて。政治にも関心なさそうで。でもこれだけ高位で歴史ある貴族だと、家系の安全な承継以外は重要に思えなくなるんでしょうね。男の子が生まれるかどうか、ものすごく大きな問題。奥さんの役割は男の子を無事に産むことだけだったんですね。変な生活だけど、歴史ある大貴族ってあんな生活にならざるを得なかったのかも。究極の貴族のあり方なのかな。妙に感心しました。
ドレスとか服装、貴族のお屋敷や庭園など、大変丁寧に撮影されています。特に印象的だったのが、ジェーン・オースティンさんの作品で読んだバースの街並みと社交界。印象的でした。
プロット自体はさほど印象的ではありませんが、１８世紀の英国貴族の雰囲気を味わうには大変有意義でした。おすすめします。

キーラ・ナイトレイは素晴らしく美しいと思いますが、なぜか文芸モノばかり好んで出演されますね。
歴史ものは大好きなのですが、悲劇のヒロインになりがちな文芸モノでは、彼女の強さがかえって邪魔かも？と
感じました。
現代の価値観からすれば、愛のない結婚で男子出産を望まれるというのは大変な悲劇でしょうが、
貴族の家系で広大な領地を持ち、一族の歴史の延長線上に連なる家長の妻ですからね・・・。
その辺の小娘の恋愛観ではまずいでしょう。
日本ではその点、正妻ひとりに重圧がかかるのではなく、側室などが産んだ子供でも家を継いでますから、
逆説的かもしれませんが、愛なんてないほうが気楽かも、なんて思います。

そういう観点で観ると、ジョージアナの生き方は、極めて現代的で、自由奔放で、立場を考えないで突っ走る姿には
とても感情移入できません。
振り回された恋人がお気の毒。
妻の友人に手を出した公爵にも問題はあるかもしれませんが、それでも公爵の憂いと悲哀と孤独のほうに
より魅力を感じました。
これは役者の技量によるものなのか、はたまた自分の人生観、年齢によるものなのかは判然としません・・・。

ＢＳプレミアムシネマでつい最後まで見てしまいました。
「バリーリンドン」とまではいきませんでしたが、１８世紀イギリスの貴族の館の豪壮さの表現、高い天井、大きな扉、冷たい大理石の床といった空間のしつらえになかなか気合いが入っていて楽しめました。同時代の風景画を意識したらしい煙るようなパステル調の野外のシーンも美しかった。空に浮かぶ雲もロココふう。
しかしながらなんといっても見どころはヒロインをはじめ女性たちの衣装の見事さ。次々と披露される華麗なドレス、豪華なアクセサリー、奇抜な髪型は日本の大奥ものに負けません。動くファッション雑誌、よく美容院なんかに置いてある「家庭画報」みたいな、というところです。
ヒロインのジョージアナは実在の人物でスペンサー家という貴族の出身。１７５７年生まれ、１８０６年に亡くなっています。故ダイアナ妃の祖先にあたる女性だそうで、不倫を続ける夫との愛のない不幸な結婚生活に苦しむという点でジョージアナの物語をダイアナの悲劇と読み替えることもできますね。とするとエリザベスはカミラ夫人か？
それにしても「華麗なる一族」の妻妾同居の英国貴族版は、ゴージャスで猛々しくさすが貴族という感じでした。
ヒロインの身の振り方は想定内でとくに面白くもなかったのですが、本作を見て「イギリスはほんとうに民主主義の先進国だったのか？」との疑問が猛然と湧きました。
この時代のイギリス、確かに名誉革命を経て議会政治が行われていたのですが、デヴォンシャー公のような有力貴族の権勢は変わらない。議会制民主主義とはじつは貴族たちが王の権力を抑制する仕組みだったと納得できました。民衆の登場はまだまだ先のこと。それに大衆のものになった議会制民主主義は、「権力を抑制するしくみ」からはずれてしまうのではないかとの疑問も生じてきます。衆愚政治ですが、これはまた別問題。
身分制度も歴然としていて貴族は従者のことなど飼い犬同様と見ているようです。レイフ・ファインズは従者のまえで平然と恥ずべき行為をしていましたから。
男尊女卑の風潮もあまりにひどい。
取りあえず同時期の日本、江戸時代は寛政期の社会がとくべつ「遅れていた」とは思えなくなりました。
ファッション映画のもたらした想定外の問題提起でした。