オール・ザ・キングスメン

リメイク作品が出るたびに、最近では‘ああ、またか．．．’と思うようになりました。　昔は‘リメイク’なる言葉もなければ、実態もなかった（私が知らないだけかも．．．）
アメリカ映画もネタが底をついてきたのでしょうか？　国外の何かに「作品の情報」を求めたり、安易にリメイクに走りがちな傾向が、最近特に気になります。
勿論、リメイク作品でも、初作と堂々と渡り合える立派な作品もあるのですが．．．

‘ああ、またか．．．’と思うのは、本作のような作品の影響大です。　４９年の「オール・ザ・キングスメン」の足元にも及ばない駄作と言ったら言い過ぎでしょうか。（もう言ってしまった）
そもそも本作を監督しているスティーヴン・ザイリアン（ゼイリアン？、どっちでもよろしい）という人、本職は脚本家です。　彼が脚本を手掛けた代表作と呼べるものとして、９０年「レナードの朝」、９３年「シンドラーのリスト」、９４年「今そこにある危機」、００年「ハンニバル」、０５年「ザ・インタープリター」、０７年「アメリカン・ギャングスター」、最近では２０１１年「ドラゴン・タトゥーの女」などがあります。

監督としては９８年「シビルアクション」等がありますが（脚本も担当）、監督はそれだけにしておけばよかったのに．．．

もう少しずっしりと心の奥に残るような作品に
なりえると思うのだが、当初の私の期待に対し、
作品の的はどちらかといえばジャックの胸のうちに
焦点がいってしまったので、惜しい作品に。

ショーン・ペン演じるスタークののし上がり的な演説が、
貧しい人々の心を掴んでいくのは良かったのだが、
その後の腐敗に絡んでいく描写があいまいで、これといった
派手な展開がないだけに、メリハリがなくつまらないと
思ってしまうかも。
哲学的な性善説などを、汚職にまみれていく政治家が
論じると深みにかけるなぁと思うのは私だけだろうか。

ショーン・ペン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、
アンソニー・ホプキンス、マーク・ラファロ等、人気、実力ともに
ある俳優陣ばかりで作ったのに、あんまり話題も人気もない作品。

清廉で高い志を持ち理想に燃える男ウィリー・スターク（ショーン・ペン）が、
政治の世界の中で権力欲によって悪徳に染まっていく。その姿を、彼の理想の姿に
魅せられ、彼と行動を共にするジャック（ジュード・ロウ）の視点で描いています。

でも、よくわからないのです。
最初はいい人だったウィリーが、当選した後、悪徳に染まっていく姿は、
まったく描かれず、画面上ではすぐ悪い奴になったみたいになっています。
ジャックの視点で描かれているのですが、
彼が悪に染まるウィリーをどうおもっているのか、不明・・・。
ジャック自身の生い立ちと過去と現在の関係に苦しんでいる様子しか
わかりません。

うーん。
１９４９年版は観ていないのですが、名作名高い作品。
今回の監督スティーヴン・ザイリアンは、前作は観たことない中で、
原作に忠実に作ったそうですが、観る方からすると、
何を描きたいのかよくわからない作品になっています。

ジュード・ロウとマーク・ラファロが好きな私には、
まあ一度で二度おいしい楽しみはありました。

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P.クラークソン狙いで観ました。
この人は報われない中年女性役なら世界一ですが、ここでも抜群の適役です。

映画としてはこの知事（ショーン・ペン）が善人なのか悪人なのか、最後がよく分かりません。というのは私が途中で２回ほど居眠りした所為では無く知事が悪い事をしているシーンがひとつも出てこないからです。寝ていた間にあったかもと思って実は翌日もう一度観ましたがありませんでした。元判事（A.ホプキンス）の過去を探らせるのも別に違法行為ではないし誰かを脅しているシーンも金を受けとってるとかのシーンも一切無し。弾劾なんとかが行われるとヤバイと言ってるのも犯罪行為の描写が無いので、ただ投票になると負けるからだけのように私には思えます。

そもそも、医者に殺される理由がよく分かりません。本当に州のお金を着服しようとしていたのかはっきり描かれないし、もしそこのところでこのお医者さんは自分が利用されたと思うなら告発すれば済む話で、人を殺すまでの動機になるかというと、私はそれは非常に弱いと思う。


ということで、知事の実際についてはどうでもよいらしいこの映画が何を言いたいのか考えましたら鍵はジュード・ロウです。この映画の主人公は二人いて、それは知事とジャック(ジュード・ロウ)です。で、この映画はジャックの苦い回想映画形式になっています。何がにがいか。ジャックは南部の支配階級出身。望んだ訳でなく搾取側に生まれた。今は支配者階級も没落して金が無いから働かなくてはならないが地場産業は癒着しまくりの新しい搾取体制。そんなとこで働きたくないのでジャーナリストになったが、ここも記事の内容を検閲される。彼がいつも白け切った表情なのはこの世界に希望が無いからです。

そこにウィリーが現れた。こいつに賭けてみようかと思った。天使のようだった昔の恋人も絡んで来た。しかしその美しい天使は兄貴のためとはいえとんでもない事をしてしまう。自分のゴッドファーザーだった元判事も体制側から金を受け取っていた。善人か悪人か不明だが知事も殺され元恋人の兄貴も死んでしまう。

これはジャックの挫折を描いた映画なのだと思えば合点がいきます。兄貴が知事を殺すのも義憤とか自分への行為に対する恨みとかではなく、天使のような妹を汚した男と思えば殺しの動機には成り得るでしょう。自分が愛した人がみんな壊れて消えて行く。ジャックの人生はまことに暗い。そういう映画なのなら、この作りは理解できます。


※ショーン・ペンの演説はヒットラーにそっくりです。明確な敵を名指しする。理屈でなく感情に訴える。難しい事は言わず、簡単な言葉を使う。同じ話しを繰り返す。そして大げさなジェスチャー。これを名演説と感心してしまう人は愚かな民衆と同じだとこの映画は揶揄っているように思います。

※知事は南部なまりで他の人はほとんどなまらない英語ですがこれは階級を明示しているのですね。支配者側に英国人役者をいっぱい使ったのはこの為でしょう。

※この映画は興行的に4千6百万ドルも赤字を出して2005年から2009年の間のワースト１位【出所：Imsb.com】だそうですが、さもありなん作品でした。この脚本では受け入れられないでしょう。この人の脚本てどれも関心しませんが、これもそうでした。

※P.クラークソンは期待どおり良かったです。しかし何が動機でこの映画を観る人がいるのか、そちらに興味が湧きました。

残念でした。
少々期待しつつレンタルしたのに・・・